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兵庫県立衛生研究所

衛研リポート

平成12年2月 第 28 号
Report of the Hyogo Prefectural Institute of Public Health


目次

兵庫県の温泉

特集 ダイオキシン類対策特別措置法の施行

調査研究紹介

感染症サーベイランス患者発生予測モデルの検討

兵庫県下の水源別からみた水道原水中の農薬の濃度及び検出頻度の経年的変化

研究所の動き

秋季衛研セミナーの報告

第15回地研近畿支部疫学情報部会定期研究会の報告

衛生研究所セミナー開催のお知らせ

淡路花博 ジャパンフローラ2000



兵庫県の温泉

温泉の源泉数と利用者数

 兵庫県内には温泉の源泉が361あり、温泉の利用者数は年間381万人に上ります。愛知県以西の西日本では、泉源数が九州4県(大分、鹿児島、熊本、福岡)と和歌山県に次いで6番目に多く、年間利用者数も、大分県に次いで2番目です。温泉を利用した公衆浴場も100施設あり、大分、熊本に次いで3番目で、多く住民に利用されています。(平成11年3月全国調査)

兵庫県の温泉の泉質

 日本の温泉は熱源から見て4つの型に分類されます。別府や雲仙、箱根のように、@第4紀(約100万年前から現在まで)の火山と直接関係する火山性温泉、A間接的に関係する海岸型温泉(海水−火山岩反応)、第4紀の火山とは関係のない温泉としてB有馬型温泉、Cグリーンタフ型温泉があります。
 兵庫県内には、火山性温泉以外の3つの型の温泉が存在します。有馬型温泉に分類される有馬温泉は古くから有名で、日本でも有数の高い食塩濃度を有し、かつ高濃度の鉄を含む「金泉」と呼ばれる温泉です。海岸型温泉とグリーンタフ型温泉は、兵庫県北部の但馬地方に広く分布しています。また温泉の泉質は、一般的に温泉が湧出する場所の岩石によって特徴づけられ、丹波地方の古生層を湧出母岩とする炭酸泉、淡路南部の和泉層群から湧出する炭酸水素塩泉、六甲や山陰花崗岩から湧出する放射能泉等が存在します。

但馬地方の温泉

 兵庫県北部の有名な温泉地である城崎温泉と浜坂温泉は、食塩を含む海岸型温泉で、65℃から80℃の温度を有する高温泉です。
 矢田川沿いの原天神田や、岸田側沿いの湯(湯村)から七釜、二日市に至る地域で湧出している温泉は、グリーンタフ型です。湯村温泉は、グリーンタフ型では珍しく100℃近い高温泉ですが、硫酸イオン、塩素イオン、炭酸水素イオンを1:1:1の割合で 含んでいます。
 グリーンタフ型温泉とは約2000万年前の海底火山活動により、海水と火山噴出物が反応して硫酸カルシウム(石膏)が生じ、これを含む海底堆積物が形成されました。この堆積物をグリーンタフを含む地層が隆起、陸地化し、この地層から湧出する型の温泉をグリーンタフ型温泉と言います。この温泉の泉質は、硫酸カルシウムを含む「石膏泉」あるいは硫酸ナトリウムを含む「芒硝泉」になります。県北部の温泉は、海岸型、グリーンタフ型温泉の他に、山陰花崗岩を湧出母岩とする放射能泉が多くあります。

温泉の保護と適正利用のために

 兵庫県立衛生研究所では、創立(昭和23年)以来、兵庫県下全ての温泉の成分分析を行ってきました。個々の温泉について、過去の分析結果を経時的に追ってみると、湧出量や溶存物質の減少が見られる温泉が多くあります。また、温泉付近の大規模な工事や地震によって、湧出量や成分が大きく変化したものもあります。このため、衛生研究所では保健所と協力して、県下有名温泉地の洲本、有馬、城崎、浜坂温泉での自噴泉の定期的な観測調査を行っています。地域毎の温泉の適正揚湯量を把握し、今後の温泉保護の基礎資料として役立たせていく予定です。
(生活環境部 寺西清 矢野美穂)

但馬地方の温泉分布



特集 ダイオキシン類対策特別措置法の施行

 平成12年1月15日からダイオキシン類対策措置法が施行されました。

 ダイオキシンは、過去に製造された農薬に不純物として含まれていたり、都市ごみや廃棄物の焼却などで非意図的に生成する物質です。しかし、環境中や食品に含まれる濃度はピコグラム(pg:1兆分の1g)で表す超微量なので、直ちに健康に影響することはありません。

日本人のダイオキシン類の摂取量とTDI

 ダイオキシンを、一生涯にわたって摂取してもヒトの健康に影響が現れないと判断される耐容一日摂取量(TDIは、平成11年に10pg-TEQ/kg/日から4pg-TEQ/kg/日に修正されました。
TDIは、従来の算出法に代えて、最も低い体内負荷量(蓄積量)で毒性がみられた動物実験結果をヒトの体内負荷量にほぼ等しいとして最小毒性量を算出し、不確実係数1/10を乗じて求めています。
 日本人が取り込むダイオキシン(コプラナーPCBを含む)は、環境調査結果および食品からの摂取量調査によって体重1kg当たり約2pg-TEQになり、TDIの約1/2に相当します。そのうち、魚介類、肉、乳製品、卵からの摂取量が全摂取量の7〜9割を占めています。

わが国におけるダイオキシン類の1人1日摂取量

ダイオキシンの環境基準と排出基準

 ダイオキシン排出量を2002年までに1997年の9割に削減するという政府のダイオキシン対策基本方針にそって基準値の設定、測定法マニュアルの整備作業などが進められました。現在、大気、水質、土壌は常時監視項目になっています。

ダイオキシンの環境基準と排出基準

最近公表された検討結果

 昨年来のダイオキシン問題で食品に関する検討結果が、インターネットや報告書で公表されています。

  1. 調理加工後のダイオキシン濃度の変化
    調理したほうれん草(煮沸)では、調理前の20%にまでダイオキシンが減少しました。(食品衛生研究Vol.49.Vol.12)
  2. 煎茶に含まれるダイオキシン
    茶葉は、野菜よりダイオキシンを多く含みますが、お茶への移行率は数分間煮沸した場合で最高0.002%、通常のいれ方では検出されません。
  3. 農用地土壌と農作物中のダイオキシン濃度
    全国の農用地52地点で水稲や大根等6品目について調査した結果が公表されました。農用地土壌の平均値が28pg-TEQ/gで農作物の平均は0.026pg-TEQ/g(土壌の約1/1000)でした。(http://www.eic.or.jp)

家庭でできるダイオキシン対策

  • ごみの減量化に努め、ごみになる物を家庭に持ち込まない、また、むやみな焼却をしない。
  • 偏食をなくし、バランスのよい食事をする。
  • 母乳保育ではTDIを超えるダイオキシンを摂取することになりますが、人工乳に替えるよりも、その有益性の方が大きいとされています。

 注)TEQ:検出されたダイオキシン同族体(異性体を含む)に毒性係数を乗じて合計し、2、3、7、8‐TCDD濃度に換算した数値。図表中のpgとngは、pg‐TEQとng‐TEQをそれぞれ省略しています。



調査研究紹介
感染症サーベイランス患者発生予測モデルの検討

年報第33号より
疫学情報部 沖 典夫、山本昭夫
後藤 操、鳥橋義和


 結核や麻疹などの感染症は、戦後の日本において医療や生活水準の向上により、着実に減少してきました。しかし、抵抗力の弱い小児や高齢者に対するこれからの感染症の予防は、今日でも重要な課題となっており、今後さらに適正な対策を検討していく必要があります。
 感染症の予防と流行を未然に防止するには、情報の収集と提供を迅速に行う必要があります。現状では感染症サーベイランスにおいて、患者発生から情報の提供までの間隔は、約2週間かかることから、この情報の遅れを補完する方法として、流行の消長に関連したサーベイランス患者情報の予測モデルを新たに検討しました。
 この予測モデルは、最初に気象要因で対数線形回帰モデルを構成し、その残差に対して集団免疫などに帰因する周期要因を適合させ、さらにその残差に患者数の増減に関する直前の傾向要因を適合させ、これら各モデルの和をもって観測します。
 対数線形回帰モデルを用いたサーベイランスでの観測精度は高く、週報でコメントされることの多い手足口病、ヘルパンギーナ、乳児嘔吐下痢症患者数の変動は気象要因のみで説明できましたが、他の疾病では気象と周期要因の他に傾向要因の組み込みが不可欠と考えられました。上記の4疾病以外に、今回対象としなかった風疹、麻疹まどの疾病に対しても当予測モデルは適用できます。



兵庫県下の水源別からみた水道原水中の農薬の濃度及び検出頻度の経年的変化

J.Health Sci., Vol.45(6),p.401〜411(1999)より
生活環境部 川元達彦、巻幡希子
辻 英高、寺西 清


 農耕地やゴルフ場に散布された農薬(除草剤、殺菌剤、殺虫剤等)が雨水とともに流出して水道水源を汚染した事例が日本各地で見られました。
 そのため厚生省は、1990年に初めて一部の農薬に対して水質基準値を設けて規制に乗りだし、毎年その種類を追加してきました。そして、1993年の水道法大改正により、規制対象となる農薬は36種に増加し、規制値も大幅に厳しくなりました。
 当所では、1990年から兵庫県下各地の原水(河川、湖沼、貯水池、伏流水、浅井戸、深井戸および湧水)を対象にして農薬調査を行ってきた結果、以下のような事実が判明しました。

  1. 水道法の改正(1993年)までの調査では、シマジン、イソプロチオランおよびフルトラニルが規制値の1/10以下の濃度ながら調査した15%以上の原水から検出されました。しかし1993年を境に、本法で規制された全ての農薬は検出率、濃度ともに減少しています。
  2. 水源別の検出の検出率は、湖沼(ダム等)>河川>伏流水=浅井戸>深井戸の順であり、閉鎖系の湖沼は流出農薬の影響を受けやすいが、被圧地下水には農薬が侵入しにくいことが判明しました。
    1996年度以降、規制対象農薬はほとんど検出されなくなりましたが、今後も水の安全性を確保するために、規制対象の農薬はもとより未規制農薬についても調査を続けて行きます。

県下の水道原水から高頻度で検出された3種類の農薬の経年的変化



研究所の動き
秋季衛研セミナーの報告

セミナー風景

 兵庫県立衛生研究所秋季セミナーが、平成11年10月29日、兵庫県職員会館で開催されました。(写真)当所研究員による4題の一般演題の後、国立公衆衛生院疫学部感染症室長の尾崎米厚先生の特別講演「公衆衛生活動に活かす積極的疫学調査事例」が行われました。阪神淡路大震災による心筋梗塞などの死亡率への影響の分析や、小学校におけるO157の集団感染事例など、身近で関心の高い事例をもとに積極的疫学調査の実際を講演していただきました。
 参加者は、県庁、保健所、近隣の地方衛生研究所の方々など、125名で、活発な討議がされました。



第15回地研近畿支部疫学情報部会定期研究会の報告

 平成年12月3日に地研近畿支部疫学情報部会定期研究会を各近畿地研や保健所等から51名の参加のもと、当研究所講堂で開催しました。一般講演を3題と特別講演1題を設定しました。一般講演は、京都府が「感染症サーベイランス独自システム」、大阪市が「結核の蔓延状況」、大阪府から「所内イントラネットの利用状況」についてそれぞれ成果が報告されました。また、特別講演では、国立感染症研究所の岡部信彦感染症情報センター室長をお招きし、感染症に関する歴史とその背景、昨年4月から施行された感染症新法に基づく情報の収集、発生状況および動向の把握やその原因調査としてのサーベイランスシステムの強化などについて有意義な講演を受けました。



衛生研究所セミナー開催のお知らせ

平成11年度衛生研究所セミナーを下記のとおり開催します。
多数の皆様のご参加をお待ちしております。


日時 平成12年3月10日(金) 13:00〜16:30
場所 神戸市中央区下山手通4丁目18番2号
    兵庫県職員会館1Fホール
内容
研究発表
 @O157集団発生に関する疫学的諸指標の予測
 A河川におけるクリプトスポリジウムの汚染実態調査
 B女子学生の踵骨骨密度と食生活状況調査
 C医薬品の溶出試験の規格設定について
 DHPLCによる水中農薬15種類の一斉分析法の検討
特別講演
 @「オゾンの生体影響」
   環境保健部 深瀬 治
 A「最近の10年間の食品薬品部の試験および研究」
   食品薬品部 松下 純雄
パネルディスカッション
 「平成11年度結核対策モデル事情の取組について」
参加予定機関
 宝塚保健所・洲本保健所・津名保健所・三原保健所
 衛生研究所疫学情報部・微生物部
 健康福祉部疾病対策室



ジャパンフローラ2000
ジャパンフローラ2000のホームページ




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(※ホームページアドレスが変更になりました)
URL http://www.iph.pref.hyogo.jp/


発行 兵庫県立衛生研究所 TEL(078)511-6581 FAX(078)531-7080
〒652-0032神戸市兵庫区荒田町2丁目1番29号

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